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母の手

 ひとりの乳飲み子を間に挟んで、ふたりの遊女が「私こそ生母」と主張する。ふたりの言い分の衝突に、裁判官を務める国王は…▼旧約聖書・列王記上に登場するイスラエル国・ソロモン王の名裁判シーンである。王は家来に刀を持ってこさせる。そして、「生きている子を二つに分けて、半分ずつ与えよ」と言う。むろん生母は即座に「子を彼女に与えてください。決して殺さないでください」と、この残虐な命令を止める▼イスラエルに栄華繁栄をもたらした王は、母の真の愛を試したのである。さすがは神から授けられたソロモンの知恵だ▼この鑑別法は、わが国の時代劇にもよく引用される。町奉行所の白州で、ふたりの女が双方から子どもの手を引っ張る。子どもが「痛い」と叫んだ刹那、手を離した方が実母といった具合だ▼野田市で今年1月に起きた小4女児虐待死事件。傷害ほう助罪に問われた母は、当時まだ10歳だった娘を死に追いやったとされる父=傷害致死罪などで起訴=の虐待に対し、その手をどう使ったのか。初公判で、母は起訴内容を認めた。母の手は娘への暴行を止めなかったというのか▼裁判官は尋問や調書の中に、母の愛を見いだせるのか。旧約聖書の紀元前より人間はサタンが耳元でささやく悪知恵を多く蓄えて、はるかに利己的になった。来月26日の判決では、母の愛の重さが量られる。

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