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透明人間

 欲望の全てがかないそうな透明人間も、なかなか苦労が多いようだ。透明でいるため、服を着られない。消化の悪い物は食べられない。雨や雪の日は体の輪郭が現れてしまうゆえ外出禁止▼従って人目を避けて、全裸の体を震わせている。「自分の情けない境遇に、走りながら泣けて仕方なかった」。自ら開発した新薬による透明化をいたく後悔する▼そんな滑稽千万の彼だが、世界征服という野望があった。「正義の殺戮(中略)恐怖政治を打ち建てるのだ」と狂熱に浮かされて友人に語る。げに恐ろしや、権力の暴走。H・G・ウエルズのSF古典『透明人間』(岩波文庫)から引いた▼透明人間とは真逆に崇高な政治理想を掲げて、桜の季節とても目立った方々がいた。統一地方選前半戦の立候補諸氏だ。県内では県議選と千葉市議選に計195人が出馬し、計144人が当選した。選挙期間中、たすきに白手袋を付け、町中を奔走して理想に基づく公約を熱く訴えていた▼アベノミクスによる景気回復は地方ほど、波及が遅れている。閑散とした駅前、シャッター商店街、草ぼうぼうの耕作放棄地…地方は疲弊し、人口減少、自治体の財政難など、難問が山積している▼有権者は地方政治の担い手の政策を吟味し、有言実行の人物を選んだ。当選後、消息不明の透明人間に堕すようなセンセイはいない、と固く信じたい。


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