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映画「美人が婚活してみたら」

 結婚するのが難儀な時代である50歳で結婚歴のない人は男性が23・4%、女性が14・1%という生涯未婚率が、それを如実に物語る▼よって婚活産業が活況を呈するのだろう。運命の伴侶との奇跡的な出会いを求め、大勢の男女が昼夜を問わず蝟集しているらしい▼時代を映す鏡の映画は、こうした事象を積極的に題材にする。『後妻業の女』(2016年)は結婚詐欺師にとって好機到来の世に、名優大竹しのぶさんが熟れた女の肢体演技で、資産と持病のある好々爺をたらし込んでいた。さもしい悪知恵だ▼さて、今回紹介する『美人が婚活してみたら』(公開中)は、WEBデザイナーの女性が主人公。道ですれ違う男性が振り返る容姿端麗も、残念な不倫体質。三十路を越えた孤独から婚活サイトに登録したことで、平凡な日常が非凡へと動き出す…▼周囲を見回しても、今の30代独身男女は精神年齢があまりに低すぎないか。いい年になっても、つらい現実を直視せず、仮想の世界に逃避する。ゆえに些細なことでも傷つきやすい。ガラスの少年・少女である▼そもそも結婚をゴールのごとく婚活に励むのはどうなのか。夫婦生活の方が試練? の連続だ。「結婚をして一人の人間が二人になると、一人でいた時よりも人間の品格が堕落する場合が多い」(『行人』より)。かの文豪漱石先生も、小説にそう書き残す。

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映画「ソローキンの見た桜」

 史実は、時の為政者によってゆがめられる。偉人の姿形や功績が恣意的に誇張されるのは世の常だ。神格化の始まりである▼では、市井の人の日記という私的視点から歴史の闇をのぞいたら真実は見えるのか。百年以上も前の日露戦争(1904~05年)時、四国は松山市のロシア兵捕虜収容所で、日本の女性看護師と負傷したロシアの将校ソローキンが出会う。実話を下敷きにした日露映画『ソローキンの見た桜』(22日公開)は、2人の日記から悲恋を写実する▼日露戦争といえば、二百三高地の戦いを思い浮かべる読者もいるだろう。旅順の要衝二百三高地をめぐる両国の激戦は、映画の題材となってきた。乃木希典指揮の帝国陸軍が多数の死者を出しながらも旅順を陥落…▼その戦時、松山市では人口3万人余に対し数千人の捕虜を収容していたという。ロシア人の人口密度が非常に濃い。外国人労働者の受け入れを拡大する改正入管法の来月施行を前に、文化の違いからの衝突が為になる▼閑話休題-。ソローキンは間諜の使命からあえて囚われの身となったが、献身的な看護師にやがて引かれていく。が、彼女にとってロシアは弟を戦死に追いやった憎き敵国だった▼映画は何度も〈汝の敵を愛せよ〉とイエス・キリストの教えを唱えてくる。その実現は子々孫々にわたって世界に恒久平和をもたらす。

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天性の破天荒

 「ワイルド」「破天荒」の虚勢が受けたお笑い芸人も、1年もせぬうちメッキがはげる。生地がないゆえ、世間の炯眼に看破されるのだ▼天性の破天荒芸人といえば、五代目・古今亭志ん生(1890~1973年)が浮かぶ。〈飲む打つ買う〉の三道楽を芸の肥やしとし、生涯借家住まいだった。臨終のきわに吸い飲みから口に含んで「あぁ、酒は旨いなぁ」(美濃部美津子著『三人噺』より)と言ったそうだから、遊びも筋金入りだ▼芸人は一発芸の飛び道具で売れるより、辛酸をなめて大器晩成が幸せである。志ん生名人は74歳の晩年、紫綬褒章を受章した。夫の胸の勲章に手を添える糟糠の妻とのツーショット写真が残っていて、晴れがましい▼現代芸人の開花期が短いのはひとえに勉強不足。まぐれ当たりの銭勘定を覚え、住宅ローンを組むような守勢では芸は育たぬ。名人は近代落語の祖『三遊亭圓朝全集』を「常に枕元に置き、稽古していた」▼と、孫で女優・池波志乃さんが語っており、人知れぬ努力家なのだ。江戸前型どおりの話芸は、名人の死後45年余を経た今も映像で私たちの腹をよじる▼「芸人は芸で勝負する」(結城昌治著『志ん生一代』より)。芸に一本気な朝太(志ん生の前座名)の矜恃は本分としてまっとうだが、一筆亭大凡下の身に置きかえて崇高である。「新聞記者は記事で勝負する」。まずは枕元の三文小説を始末せねば…。

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